楽天、競争力保持は出店者の負担で。そして反発招く

楽天(4755)への出店者の一部が反発しています。今回に始まったことではありませんが、楽天からの締付けにいよいよ我慢がならなくなってきているようです。
出店者反発の原因
反発の原因となっているのは送料無料の義務化です。
2020年3月から、3,980円以上の買い物をした場合、自動的に送料無料と画面に表示されるというのです。今までは出店者側が送料を決めたり、送料無料にする買い物の金額を決めたりすることができました。
その裁量を出店者側から奪い取り、楽天ショッピングモール一律の対応にしようというわけです。
送料無料化を急ぐ理由
さて、この送料無料化。なぜ、楽天はこのような対応をとろうとしているのでしょうか。
想像がつく人も多いでしょうが、やはり、アマゾンの存在です。アマゾンは物流網の構築に大量の資金を先行投資し、2,000円以上の買い物で送料は無料です。
インターネット活用に関する以下のデータを見ると日本の電子商取引市場にはまだまだ潜在的な成長余地があることがわかります。

(出所:社会実情データ図録)
日本は、インターネットを利用している人の比率は世界のトップクラスなのですが、インターネット通販を利用している人の割合はまだまだ低いのです。
ちょっと驚いたのはアメリカ。インターネット発祥の地なのに、その利用率は8割程度。しかし、そのほぼ9割がインターネット通販を利用しています。
国土の広さや人口密集度など物理的な要因もあるでしょう。そして、アメリカの格差社会の進展が見て取れます。
そして、日本ではアマゾンが売上げを伸ばし、楽天を苦しめています。アマゾンに対抗するには、送料負担を顧客に押し付けるわけにはいかないということなのでしょう。
送料無料化の影響とその賛否
送料無料化への出店者の賛否は分かれています。
賛同する理由としては、送料無料化による売上げ増です。送料負担が増えても、それ以上に売上げが増えれば利益も増えるというわけです。
一方、反対する理由は当然、送料負担の増加です。
送料コストを商品価格に転嫁すれば、値上げの印象をぬぐえません。転嫁しなければ出店者がそのコストを負担せざるを得ず、利益が吹っ飛ぶというわけです。
そもそも、店舗側が商品価格に送料を上乗せして、送料無料と表示することが法律上、問題をはらんでいるとの指摘もあります。
送料無料化強制の法的な問題
さて、この送料無料化、上記の法的問題とは別の法律的な問題をはらんでいます。
それは「優越的地位の濫用」。
楽天は出店者に対し、立場が強く、その立場を利用して出店者に不当な負担を押し付けているのではないかという見方です。
そして、楽天の今回の措置に対抗して、200ほどの出店者が結束し、楽天ユニオンが発足しました。
この楽天ユニオンが、送料無料化は独占禁止法上の優越的地位の濫用に当たるのではないかと公正取引委員会に調査を要請しています。
もっとも、楽天サイドは事前に、今回の送料無料化について公正取引委員会に相談をしていたようであり、その結果を受けての措置でしょうから、楽天ユニオンの主張が通る可能性は低そうです。
楽天による出店者への締付けの歴史
今回の騒動で思い起こされるのが、5年ほど前に起こった、出店者の銀行口座を楽天銀行に統一するよう強制した問題です。
銀行振込で買い物をする顧客の振込先銀行はすべて楽天銀行でなければならぬ、とやったわけです。
その際も独禁法の問題が浮上しました。
この楽天銀行への強制に反発して、楽器販売大手のサウンドハウスが怒り、楽天とバトルしたうえで結局、楽天から撤退したのは記憶に新しいところです。
サウンドハウスは品揃えも良く、良心的な価格で、また独自ブランドでのギターを販売するなど楽器販売業者の中でも存在感が大きいショップです。サウンドハウスはその後、独自でショッピングサイトを運営しています。
難しい舵取り
それにしてもこの問題の舵取りは難しい。
アマゾンに遅れを取れば、楽天全体が衰退していくのは間違いないですし、かといって、出店者に過剰な負担を強いれば、退店するショップが出てくるリスクがあります。
そして、いまやインターネットショッピングモールは乱立していますから楽天にこだわる理由もなくなってきました。その中で楽天が存在感を維持し、さらに高めていくためには店がたくさんあって、商品数が多く、価格も安くなければなりません。
しかし、それだけではまだ足りないと思います。
キーとなるのは楽天スーパーポイントのますますの活用でしょう。楽天経済圏をさらに巨大化できるのか、デス・バイ・アマゾンの一犠牲者となってしまうのか・・・。
楽天は今後も綱渡りの選択を続けていかなければならないでしょう。
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