働き方改革の果実、大企業でさえ半分しか還元されず

2019年4月からまずは大企業向けに施行された罰則付きの働き方改革法案。
これにより、残業は減っているようなのですが・・・。
減った残業代の行方
日本経済新聞が大企業向けにアンケートを実施し、145社からの回答によれば多くの企業で残業が減少している実態が明らかになりました。
それはそうでしょう。実質、残業禁止とも曲解されかねない法律ですし、違反すれば罰則が課されることになったのですから。
それよりも驚かされるのは、大企業でさえ、約半分の企業で、減少した残業代は社員に賞与などの形で還元されることはないという実態です。
浮いた残業代は会社の利益となり、生産性を高めた社員にはご褒美なしという構図なのです。
生産性を高めたのならば、社員にも還元するのが当然じゃないでしょうか。会社は株主だけのものではありませんし、長期的には社員のモチベーションも下がり、株主も損をすることになります。
2020年4月からは中小企業にも法施行
さて、この働き方改革関連法案。2020年4月からは中小企業にも施行されることとなります。
大企業でさえ、上記のようなお寒い状況なのですから中小企業でどうなるかは推して知るべきでしょう。
唯一の救いは株を上場していないので、株主利益至上主義というプレッシャーとは距離を保てることです。
しかし、そもそも中小企業は大企業ほど利益を上げておらず、還元しようにもその原資がなかなかひねり出せないというのが実態ではないのでしょうか。
サービス残業も未だ横行しているのは間違いありません。
昨年(2019年)の10月から約3か月、一日の休みも取れないのに、残業は月25時間までしか申告できない圧力があり、残りはサービス残業だという人に実際会いました。
経営者でもなんでもない一般の社員なのです。ホリエモンのように、そんな会社辞めればいいじゃないかという考え方もありますが、一人ひとりさまざまな事情があり、そう単純な話ではないのです。
これは給与未払いであり、週一日は休まなければならないという労働法規にも反する法令違反です。そして、中小企業ではそんなことが横行しているのが実態なのです。
法が施行されたとしても、この現実が即座に解消されるとは思えません。
むしろ、悪質に地下に潜り、隠されていくというのが現実なのではないでしょうか。
働き方改革と賃金の動向
働き方改革などと叫ばれ出したのはここ3、4年のことだと思います。
きっかけはやはり電通の社員の自殺でしょう。東大を卒業した才色兼備な令嬢が、「生きるために働くのか、働くために生きるのか」などと悩み、長時間労働とパワハラにより半ば奴隷状態におかれ自ら命を絶ったことは本当に悲しく、ショッキングな出来事でした。
だから、働き方改革そのものは悪いことではないと思うのです。ただ、今はまだ初期不良と考えれば我慢もできるということではあります。
以下はここ数年の労働者の実質賃金の推移を表しています。

(出所:厚生労働省)
注目したいのは、きまって支給する給与です。平成27年からまったく増えておらず(というかむしろ減っている)、それなのに消費増税をするのですから、まったく愚かな政策を政府はとりました。
2019年10月の消費増税後、10月の小売売上げは前年同月比で7.1%の減少。
これは9月の駆け込み需要の反動もあったでしょうから、多少やむを得ないとして、注目していたのは11月の消費動向です。
2019年11月の消費動向
以下に示すように前年同月比で2.1%の減少と幾分戻りましたが、消費意欲は低調です。

(出所:経済産業省)
働き方改革での果実は半分しか還元されず、増税だけは全員に課されるのですからある種当たり前の帰結でしょう。
今年(2020年6月)でポイント還元も終わり、2段階めの実質増税です。夏以降、ボディブローのように消費に影響を与えることになりそうです。
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