神の見えざる手?トヨタの低PERが示唆するもの

ドイツのフォルクスワーゲンと並び、世界トップの自動車企業であるトヨタ(7203)の株式のPERが、ここのところずっと日経平均を下回って推移しています。
これは何を暗示しているのでしょうか・・・。
自動車株の動向
世界的に自動車株は概ね低調に推移している中、トヨタは案外堅調ではあります。しかし、予想PER(※)は約10倍とさみしい限り。
割安というより将来への期待がないという見方が大きいと思います。あまりの低PERや高配当利回りは、将来に起こりうる、悪い何かを予測しているように思えてなりません。
しばらく前に日産の異様ともいえるような高い配当利回りが典型です。結局、楽器の箱に隠れて逃げるような輩が出てくる始末なのです。
ちなみに日経平均の平均PERは14倍前後です。
世界的に自動車販売が低迷していることに加え、自動車産業を取り巻く環境変化が目まぐるしく、また不確実性を増しており、安心して株を買えなくなっています。
(※)PER
株価と一株当たりの利益で計算する株式の投資価値を判断するする尺度。株価÷一株当たり利益で算出する。例えば、株価が1,000円で、一株当たり利益が100円ならば、PERは10倍である
株価と一株当たりの利益で計算する株式の投資価値を判断するする尺度。株価÷一株当たり利益で算出する。例えば、株価が1,000円で、一株当たり利益が100円ならば、PERは10倍である
CASE?何それ?
自動車産業を取り巻くキーワードで「CASE」なるものが話題になっています。CASEとは、
C:Connected(つながる車)
A:Autonomous(自動運転)
S:Shared & Services(シェアリング)
E:Electric(電気自動車)
A:Autonomous(自動運転)
S:Shared & Services(シェアリング)
E:Electric(電気自動車)
の頭文字からとった造語です。
インターネットとつながって、情報をやり取りしながら自動運転をする。そして、配車アプリを活用することで、自動車を個々の人間が所有するのではなく共有する。また、従来の化石エネルギーを燃やして走る自動車から電気自動車への転換が図られていくといった時代の大きな転換期に来ています。
日本の自動車メーカーの予想PER
ところで、トヨタ以外の日本の自動車メーカーの予想PER(2020年3月期の会社予想による業績に基づく)はどの程度なのか調べてみました。
日産: 22.6倍
ホンダ: 9.3倍
マツダ: 13.9倍
スズキ: 15.0倍
スバル: 12.4倍
三菱 : 134.2倍
ホンダ: 9.3倍
マツダ: 13.9倍
スズキ: 15.0倍
スバル: 12.4倍
三菱 : 134.2倍
日産と三菱は業績の落ち込みが激しくちょっと異質ですが、概ね低PERの銘柄が多いです。
特にトヨタとホンダという日本を代表する自動車メーカーの低PERが目立っています。これは将来の業績悪化を見越したものかどうかが焦点です。
トヨタと中国の関係、そしてアメリカ
ところで、国際政治学者の藤井厳喜さんが、YouTubeで最近のトヨタと中国の関係について、興味深いお話をされていました。以下はその要旨です。
・2018年5月に李克強首相がトヨタの北海道の拠点を視察
・その際にトヨタは社長自らが案内
・その後トヨタと中国の関係は深まったようである
・2019年4月にはトヨタの社長が中国の清華大学で講演し、トヨタと清華大学で連合研究院なるものを作ることとした
・その後も中国企業と電気自動車の共同開発をする合弁会社を設立、中国の配車アプリの会社に出資、バイドゥ(百度)の自動運転開発連合に参加など次々と中国企業と連携を深めている
・上記のようなことをしていたら、トヨタはアメリカからバッシングを受ける可能性がある
・自動運転技術などは軍事技術にも転用される重要な技術であり、脅威ともなりうる
・中国市場の将来性を有望視しているようだが、北米市場はトヨタの一番のドル箱であり、不買運動やバッシングにより日本車への関税をかけやすい環境が整う
・その際にトヨタは社長自らが案内
・その後トヨタと中国の関係は深まったようである
・2019年4月にはトヨタの社長が中国の清華大学で講演し、トヨタと清華大学で連合研究院なるものを作ることとした
・その後も中国企業と電気自動車の共同開発をする合弁会社を設立、中国の配車アプリの会社に出資、バイドゥ(百度)の自動運転開発連合に参加など次々と中国企業と連携を深めている
・上記のようなことをしていたら、トヨタはアメリカからバッシングを受ける可能性がある
・自動運転技術などは軍事技術にも転用される重要な技術であり、脅威ともなりうる
・中国市場の将来性を有望視しているようだが、北米市場はトヨタの一番のドル箱であり、不買運動やバッシングにより日本車への関税をかけやすい環境が整う
まとめ
上記、藤井さんの見方はなかなか説得力があります。トヨタはどうやら二兎を追っているようですが、最大の市場であるアメリカから梯子を外されてしまう可能性は捨てきれないでしょう。
トランプ大統領の逆鱗に触れるようなことがあり、それに世論が追随すれば、日本の自動車産業に打撃となる高関税がかけられるかもしれません。
とにかく、トヨタには中国にのめりこまないよう望むばかりです。
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