働き方改革のつけは中間管理職へ。そして所得は減少へ・・・

2019年4月、大企業に対して先行して施行された働き方改革関連法案。
実体は骨抜き、あるいは特定の人へのしわ寄せといった構図が明らかになってきました。
総務省の調査結果
昨年4月からは時間外労働は年720時間以内とし、月に100時間を超えてはならないこととされています。また、2~6か月平均で月80時間以内にしなければなりません。
しかし、実態はお寒い限り。
総務省の調査によれば、2019年4月の法施行後も月100時間超の残業をした人が月平均で170万人にも達するといいます。また、平均で月80時間超の残業をした人は約300万人と推計されています。
行き過ぎた残業は体調に影響を与えます。下の図を見れば労働時間が極端に長くなると健康状態が悪化することは明らかです。

(出所:社会実情データ図録)
男女問わず、週60時間以上働いている人の健康状態は明らかに悪くなっています。
メンタル不調に陥って休職する人が多くなるのは言うまでもないでしょう。以下は、精神疾患の患者数の推移です。

(出所:厚生労働省)※赤丸は追加
注目すべきは赤丸部分の増加です。この2つはストレス要因であることは間違いないでしょう。
お隣韓国で自殺が多いのは長時間労働と無縁ではないと思います。またロシアも労働時間が長く、自殺率も高い国です。


(出所:社会実情データ図録)
しわ寄せは中間管理職へ
人手不足でも仕事の量はなかなか減らない。そして部下に違法残業をさせられないと考える上司は、部下の仕事を自分でやらなければならなくなり、その負担が大きくなっています。
そして、管理職は残業代がつかない。一般社員は残業代が減って生活は苦しくなり、管理職は給料が同じで仕事はハードになっているという構図です。
中には一時期問題になった「名ばかり管理職」もいることでしょう。
すべてを否定する気はありませんが、働き方改革で誰もが幸せになったわけではありません。むしろ、自由に仕事ができなくなって不幸になった人も多いように思えます。
今まで隠されていたサービス残業が表面化して、賃金に反映されることとなった、まともな会社?の社員はまだ救われるでしょう。
しかし、法違反がこれほど横行しているところを見れば、未だサービス残業も存在していると思わざるを得ません。
罰則が甘すぎるのでは?
働き方改革法案、これに違反するとどんな罰則があるのでしょうか。
違反があった場合、使用者は30万円以下の罰金か、6か月以下の懲役が科される可能性があります。
しかし、この罰則って、極端ではなかろうか・・・。悪質な場合には懲役まで科される可能性がある一方、罰金はわずか30万円。
これは推測ですが、社員を自殺にまで追いやって、世論が騒いだ場合くらいしか懲役などは科されないと思います。一方で、30万円程度の罰金ならば痛くもかゆくもないと開き直る企業もないとはいえません。
罰金の上限は、企業規模を考慮した金額にして実効性のあるものにしてもらいたいものです。従業員1,000人以上なら上限3億円、従業員10人なら上限300万円とか・・・。
日本経済への影響を懸念
さて、残業代がつかない管理職がたくさん残業をし、一般社員の残業代が減れば当然、日本全体としての消費は減少するでしょう。残業代が月10万円減ったなどという声も耳にします。
ただでさえ、2019年10月の消費増税で消費意欲に水を差しているのに・・・。
とにかく、企業は労働生産性を向上させるとともに、残業の減少で減った費用は賞与で社員に還元するようにしなければならないでしょう。
以下は日本人の労働時間の推移を表しています。

(出所:社会実情データ図録)
戦前の労働時間は概ね年間で3,200時間くらいでしょうか。
1日8時間労働と仮定すれば、年中無休で働かなくてはなりません。日曜休みだとすれば毎日10時間です。それでも今よりは貧しかったでしょう。
昔の人が短命だったのは、医療が発達していなかったことはもちろんですが、働きすぎによる過労、栄養の不足などもあったのではと推測します。
やはり機械化やIT化による技術の進歩、労働生産性の向上は素晴らしいと思わざるを得ません。
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