医療負担増大をタネに証券業界が新たなビジネスチャンス模索へ

病院



地盤沈下を続ける証券業界が高齢化にともなう医療負担の増大をタネに新たなビジネスチャンスを探しています。



モデルはアメリカにあり


ご存じのとおり、アメリカの健康保険は国民皆保険ではありません。

一定の条件を満たした弱者を除き、医療費負担を抑えるためには民間の保険会社の医療保険に加入する必要があります。

民間の営利企業ですから当然に利益を追い求め、契約者と保険会社の利害は一致しません

また、医療機関も自由化が進んでおり、診療費は自由競争の世界です。しかし、医療には患者と医療機関の間に情報の非対称性があります。それも半端ではなく。

病気を治したい患者は弱みに付け込まれるように、言い値で医療を受けざるを得ない。おのずと医療費は高くなっていくわけです。

以下は世界各国の医療費の対GDP比を示しています。

20200124iryou.jpg
(出所:社会実情データ図録)

アメリカがダントツのトップ。悪しき自由化、規制緩和が進んだ結果といわざるを得ないでしょう。

それでも健康で長生きできているのであれば救われるのですが、むしろ逆になっているのですから救い難い。

以下は主要先進国の平均寿命の推移を表しています。

20200124iryou2.jpg
(出所:社会実情データ図録)

アメリカは最も低く、しかもここ最近は平均寿命が短くなってきているという異常事態です。

病院へ行けば診療費は高い、薬も高い。保険会社は保険金を出し渋る、保険料は高いといった状況が生まれているわけです。また、健康に自信のある人にとっては保険料を払うこと自体が馬鹿らしくなってくるのではないでしょうか。

そんなアメリカで2004年にスタートしたのが、健康貯蓄口座(HSA)という制度です。

健康貯蓄口座(HSA)とは


ここ最近はやりの確定拠出年金と同様に毎月一定額を掛け金として拠出して運用し、医療費の支出に備えるというものです。

HSAはアメリカで2004年に始まり、現状で加入者は約2,500万人といわれています。国民の1割弱が加入している計算になります。

年3,500ドル(約38万円)を拠出限度額とし、拠出金は税控除の対象となります。掛け金を自分が選択した投資対象(投資信託など)に投資し、運用益は非課税となります。

そして、病気やケガなどで医療機関を受診したり、入院したり、投薬を受けたりしてかかった費用をHSA口座で支払います。

医療費を使わなかった場合、余った分は翌年に繰り越されます。口座残高に上限はなく、転職しても持ち回りができる点は確定拠出年金と同じです。

HSAはアメリカ国民短命化の遠因では?


ところでこのHSA、アメリカの平均寿命が短くなっている要因の一つではないかと思えるのです。

毎月積み立てている以上、資産は徐々に積み上がっていきます。そして、その資産を使いたくないという動機が働くのではないのかと思うのです。

そうなると、少々体の調子が悪くても診療を受けない、そんな人が増えるのではないでしょうか。どうにも我慢できなくなって受診したときには時すでに遅し。早期発見していれば助かった病気が、手遅れになってしまうのです。

その点、日本の国民皆保険は素晴らしいシステムです。この仕組みは絶対に変えてはいけない。アメリカの轍を踏んではならないと強く願うのです。

まとめ


証券業界は今、非常に厳しい環境に置かれています。従来型の手数料ビジネスが限界を迎えている中、新たな収益のタネを探しています。HSAもその中の一つなのでしょう。

しかし、アメリカの先例を見ればとても国民のためになるとは思えません。

緊縮財政を進めたい日本政府も興味津々であることは容易に推察できますが、慎重な検討をお願いしたいところです。

【関連記事】
株式・投信の手数料無料化が一気に加速し、証券業界再編再び
『財務省が日本を滅ぼす』(医療自由化のなれの果て)
アメリカ人の平均寿命の特徴について考える
「人生100年時代」っていったい誰が言い出したのかを検証

マンガでやさしくわかる病院と医療のしくみ [ 木村 憲洋 ]

価格:1,760円
(2020/1/24 22:33時点)




関連記事

コメント

非公開コメント