スズキ、VWと同じ穴のムジナ?排ガス不正ソフト使用疑惑

VW(フォルクスワーゲン)が数年前、不正ソフトによる排ガス規制逃れを行ったのは記憶に新しいところです。その手口は超悪質。
なぜ未だにいけしゃあしゃあとクルマを売っているのか不思議なくらいです。
そのVWと因縁浅からぬスズキが・・・。オランダ当局から不正ソフトの使用を指摘されることになるとは大いなる皮肉です。
スズキとVWの浅からぬ因縁
スズキ(7269)は2009年、ドイツのVWと提携しました。以前はアメリカのGMと提携していましたが、その代わりといったところだったのでしょう。
自動車メーカーとしては小ぶりで、技術開発投資に巨額の予算をかけられないスズキが世界で生き延びていくには、巨大メーカーと提携し技術供与を受ける必要があるからです。(ちなみに現在はトヨタと提携しています。)
しかし、VWとの提携はその後大きな亀裂を生むことになります。
スズキはVWから20%弱の出資を受け入れたわけですが、VWは勝手にスズキを持分法適用会社として、あたかもVWのグループ会社のように決算上取り扱ったのです。
日本とドイツの法律の違いが関係しているようですが、これにスズキは猛反発。あくまでも独立路線を貫きたいスズキにとっては予想もしていなかったことだからです。
2011年にスズキはVWに提携解消を要求しますがVWはこれを拒否。
結局、提携解消は国際仲裁裁判所にまで持ち込まれ、裁判は延々と続き、2015年にようやく提携が解消されることになりました。
VWの不正発覚
提携解消後、VWにとんでもない疑惑が持ち上がります。ディーゼル車の排ガス規制をクリアするためにエンジンのソフトウェアに不正を施していたのです。
クルマを止めたままテストすると、排ガス規制をクリアする数値が出るのに、実際の道路で走るとなぜか数値が悪化するのです。
これを不信に思ったアメリカの調査員がその謎を徹底的に調査したところ、静止している場合は規制をクリアするよう不正なソフトを組み込んでいたことが発覚したのです。
VWが使った不正ソフトの仕組み
どんな仕組みなのか?
これは自動車関係者から聞いた話ですが、ハンドルを目いっぱい切ったときに汚いガスを一気に排出するようにソフトが仕組まれていたそうです。
通常のテストだとハンドルをマックスに切るようなことはありえない。それを逆手にとったイカサマなのですが、実際に公道を走るときは交差点などで曲がるときにハンドルは最大まで切り込まれます。
そこで、問題の排ガスが一気に吐き出されるため、静止テストとの差が出てきて、疑いを持たれてばれてしまったというわけです。
当時、日本のメーカーはどんなに研究してもVWのような良い数値が出ず、規制をクリアできないためアメリカへの輸出ができませんでした。VWがどんな技術を使っているのかがわからず、本当に不思議だったそうです。
しかし、それを実現していたのは不正に仕組まれたソフトウェアだったのだからシャレになりません。会計でいえば粉飾決算です。
VWの不正が発覚したのはスズキがVWとの提携を解消した後。スズキの先見性か?、スズキは正しかった、運がいい、などと言われていたことを思い出します。
スズキもまた同じ穴のムジナ?排ガス不正疑惑
ところが最近、オランダ陸運局がスズキのディーゼル車で排ガス制御に不正があったと発表しました。
これはまったく知らなかったのですが、2017年にオランダの陸運局はスズキのディーゼル車「ビターラ」が排ガス規制を逃れるために不正ソフトを使用しているとの疑いがあり、調査すると発表していたのです。その結果が今回出たというわけなのです。
不正があったとされる車種は「ビターラ」と「エスクロス」。ハンガリー工場で生産されていましたが、2018年には製造を止め、欧州のディーゼル車市場から撤退しています。
唯一の救い
話がややこしいのは、今回のディーゼルエンジンを作っているのはスズキではなく、イタリアのフィアットであること。
スズキはフィアットからエンジン供給を受けていたのです(※)。
((※)フィアットは現在FCAという持株会社の傘下であり、報道ではFCAの名称が使われています。)
よくわからないのは、オランダ以外の国からも問題があるとの指摘を受けており、スズキは自主的にソフトを改修していたのですが、オランダ陸運局は改修後のソフトにも問題があるとしていることです。
スズキはオランダ当局の指摘を受け、調査に全面的に協力する姿勢を表明しています。そして、さらなる改善が必要な場合はフィアットと協力して改善する意向です。
スズキは新興国を主市場としてはいますが、欧州市場での販売台数は全体の8%を占め、決して小さくはありません。信頼を失ったり、販売を禁止されたりすれば少なからずダメージを被ることとなるでしょう。
スズキのIRニュース
スズキは2020年1月24日付で、ホームページ上のIRニュースにて、今回の騒動についてコメントを発表しています。
その要約は以下のとおりです。
・「ビターラ」「エスクロス」は、フィアットが製造したディーゼルエンジンを搭載していたが、既に生産は終了している。また、2016年11月から、オランダ当局に届出をした上で、自主キャンペーンにより、フィアットが作成したソフトウェアのアップデートを実施している。
・2017年7月に公表されたオランダ当局の調査報告書には、アップデート後のソフトウェアに関し、問題がなかったこと及びアップデート前のソフトウェアについては試験を継続する旨が記載されていた。
・2019年11月14日にオランダ当局より、2年を超える期間に実施された多くの排ガス試験の結果が記載された107頁に及ぶ試験結果報告書のオランダ語版を受領した。また、2019年12月20日に、当該報告書の英訳版を受領した。当該報告書には、アップデート後のソフトウェアについて問題がある旨記載されており、本年2月中旬までの回答が求められている。
・2017年7月に公表されたオランダ当局の調査報告書には、アップデート後のソフトウェアに関し、問題がなかったこと及びアップデート前のソフトウェアについては試験を継続する旨が記載されていた。
・2019年11月14日にオランダ当局より、2年を超える期間に実施された多くの排ガス試験の結果が記載された107頁に及ぶ試験結果報告書のオランダ語版を受領した。また、2019年12月20日に、当該報告書の英訳版を受領した。当該報告書には、アップデート後のソフトウェアについて問題がある旨記載されており、本年2月中旬までの回答が求められている。
どうも報道とは微妙な食い違いが見られます。
スズキの主張が正しければ2017年にいったん問題がないとされたのに、2019年に蒸し返されたということになり、ある種同情してしまいます。しかし、スズキの発表が遅れたのは
・外国語の報告書であったこと
・107ぺージと報告書の内容が多かったこと
であるという言い訳めいた印象を受けます。オランダ当局が発表しなければ、スズキはそのまま隠しておくつもりだったのでは?とも勘ぐってしまいます。
とにかく現状では不透明な部分も多く、今後の調査結果が待たれるところですが悪質でないことを祈るばかりです。
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