アメリカが真に目指すもの。世界一極の覇権国(幻想)

アメリカ



1990年代に入り、日本は経済的に大いに弱体化したことは火を見るよりも明らかです。そして、その弱体化の要因は日本のバブル崩壊とそれにともなうデフレの長期化というのが定説だと思います。

しかし、バブル崩壊とデフレ長期化の要因は実はアメリカの意図であったと考えるのは行き過ぎでしょうか。

国際政治学者、伊藤貫さんの「自滅するアメリカ帝国」を読んでいて、その意図は間違いないと確信したのです。



冷戦終結後の新たなアメリカの世界戦略


1991年にソ連が崩壊し、第二次世界大戦後の東西冷戦は終結することとなりました。

それまで、世界はアメリカとソ連という二極に分断されていましたが、世界の覇権国はアメリカ一国となったわけです。そこで、アメリカは軍事的に新たな戦略を創り出します。

世界をアメリカだけで支配するという世界一極化のための戦略です。これを具体的に表したのが、1992年2月18日に作成された「1994~99年までの国防プラン・ガイダンス」(以下、DPG)です。

DPGとは


DPGは先述のとおり、「1994~99年までの国防プラン・ガイダンス」のことを指します。このプランはホワイトハウスとペンタゴン(国防総省)で検討された機密文書です。

DPGの内容を知ることができたのは政府や軍のトップクラスのみでした。ところが、何者かがDPGをニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストにリークしたのです。

このプランは重要であり、国民も知るべきであるというのがリークの理由です。そして驚くのはその内容です。

DPGの具体的内容


なにより驚かされるのはDPGの内容です。主な項目について、「自滅するアメリカ帝国」内にまとめられていますので、引用します(赤字は加工しています)。

1.ソ連崩壊後の国際社会において、アメリカに対抗できる能力を持つ大国が出現することを許さない。西欧、東欧、中近東、旧ソ連圏、東アジア、南西アジアの諸地域において、アメリカ以外の国がこれらの地域の覇権を握る事態を阻止する。

2.アメリカだけがグローバル・パワーとしての地位を維持し、優越した軍事力を独占する。アメリカだけが新しい国際秩序を形成し、維持する。そして、この新しい国際秩序のもとで、他の諸国がそれぞれの”正当な利益”であるか、ということを定義する権限を持つのは、アメリカのみである。

3.他の先進産業諸国がアメリカに挑戦したり、地域的なリーダーシップを執ろうとしたりする事態を防ぐため、アメリカは他の諸国の利益に対して ”必要な配慮”をする。アメリカが、国際秩序にとって ”害”とみなされる事態を修正する責任を引き受ける。何が国際社会にとって ”害”とみなされる事態であるか、ということを決めるのはアメリカ政府のみであり、 ”そのような事態を、いつ選択的に修正するか”ということを決めるのも、アメリカ政府のみである。

4.アメリカに対抗しようとする潜在的な競争国が、グローバルな役割、もしくは地域的な役割を果たすことを阻止するための(軍事的・経済的・外交的な)メカニズムを構築し、維持していく。

5.ロシアならびに旧ソ連邦諸国の武装解除を進める。これら諸国の国防産業を民生用に転換させる。ロシアの保有する核兵器を、急速に減少させる。ロシアの先端軍事技術が他国に譲渡されることを許さない。ロシアが、東欧地域において覇権的な地位を回復することを阻止する。

6.ヨーロッパ安全保障の基盤をNATOとする。NATOは、ヨーロッパ地域におけるアメリカの影響力と支配力を維持するためのメカニズムである。ヨーロッパ諸国が、ヨーロッパだけで独自の安全保障システムを構築することを許さない。

7.アメリカのアジア同盟国 - 特に日本 - がより大きな地域的役割を担うことは、潜在的にこの地域を不安定化させる。したがってアメリカは、太平洋沿岸地域において優越した軍事力を維持する。アメリカは、この地域に覇権国が出現することを許さない。

なんという傲慢で独善的な考え方なのでしょうか。まるでどこかのグレた少女のようです。

DPGで想定される潜在的競争国(敵性国)


このDPGで描かれた潜在的な競争国は、ロシア、中国、日本、ドイツの4国です。

ロシア、中国は体制が違うから理解できますが、日本とドイツは戦後、西側民主主義陣営となった国です。いわば仲間なのに裏切られた気分になります。

しかし、潜在能力があるならば同盟国をも抑え込んでおこうというのがアメリカの本音なのです。一般論として、経済力が強くなればそれに比例して軍事力も強くなります。

そしてアメリカは子分が親分よりも強くなることは許さないというわけです。こんなアメリカの本音を知っているプーチンがアメリカへの反発心を強めるのは当然といえば当然でしょう。

そして、日本。バブル期にはアメリカのビルを買い漁った世界ナンバー2の経済大国が今や見る影もないほどに経済大国の座から滑り落ちました。そして代わりに登場したのが中国です。

教室にバタフライナイフを持った不良番長がいて、「靴を舐めろ」と言われて「わ、わかりました」と舐めて安心しているのが、日本ドイツ。せめてカッターナイフで対抗するのがロシア中国といったところです。

北朝鮮もカッターナイフを買ってきたようですが、「捨てろ」と言われてるのが現在です。でもなかなか捨てません。かつてリビアのカダフィ大佐がカッターナイフを捨てた途端に、ぶん殴られて殺されてしまったことを知っているからです。

イランシリアは「こ、この野郎」と素手で対抗しています。そしてイランはカッターナイフを持ちたくて仕方がありませんが不良番長の監視が厳しくてなかなか手にできません。何しろ番長のかわいい子分であるイスラエルがそばにいるからです。そして、イスラエルは番長のご機嫌を窺って取り入るのが実に上手です。

そしてこの中でいったい誰が立派なのかと問われれば・・・。考え込んでしまいます。

さて、DPGの考え方は今でも息づいており、アメリカの覇権を揺るがす中国を抑えこもうと必死なのが今のアメリカの姿なのです。

しかし、いささか遅すぎた。もはや中国は巨大化し、軍事的にも経済的にもアメリカ一国で抑え込むことは不可能です。やがては立場が逆転する日が来るかもしれません。

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