借金までして配当、自社株買い。そして債務超過とは・・・

それにしても日本人的な感覚では理解不能なのが昨今のアメリカ企業の行き過ぎた株主還元です。
いくら金利が低いとはいえ、赤字なのに借金までして配当したり、自社株買いを行ったり・・・。得られた利益以上の金額を株主に還元し、そのうえ、債務超過に陥るというのですから。
株主還元で債務超過に
2019年度、アメリカの主要500社のうち、24社が債務超過に陥ったといいます。この傾向は長期的に続いており、右肩上がりに増加しています。
ボーイング社は737MAXの問題を抱え、2019年度は6億ドル(約660億円)の赤字決算となりました。にもかかわらず、株主には46億ドル(約5,060億円)の配当金を払い、26億ドル(約2,860億円)の自社株買いを実施しました。
そしてその結果、なんと83億ドル(約9,130億円)の債務超過に陥ったのです。それでも同社のCEOは、将来、劇的な変化がなければ配当を続けるというのです。
無謀な株主還元、その原資は?
それにしてもいったいその原資は・・・?
ここまでくると株主資本主義も行き過ぎだと思えるのですが、この異常な事態を支えているのは超低金利とそれによって行き場を失った金余りです。
金を貸したい人は増え、また企業は借金を増やしても、その調達コストが株式よりも低ければその鞘を抜けるという綱渡り経営なのです。
金利が反転して金利負担が増したり、世界的な景気後退が起こって、運転資金が滞れば即破綻というリスクと隣合わせです。
企業経営に対する価値観の違い
ここまでアメリカ的感覚と日本的感覚がずれるのは経営に対する価値観の違いもあります。
アメリカの経営者や株主は会社を単にお金を儲けるファンドのようなものととらえている節があります。ただの手段であり、目的が達成できるのなら手段はどうでもいいのだろうと思います。
日本企業はまだアメリカよりはバランスの取れた企業経営が行われていると思いますが、悪しき株主至上主義がはびこりつつあります。
以下は日本企業の純利益と配当金の推移を表しています。

(出所:財務総合政策研究所)
デフレ下にあっても、企業はリストラにより利益を伸ばし、株主への還元を増やしているのがわかります。そして、これは外国人投資家の増加と見事に呼応しているのです。

(出所:内閣府)
モノ言う外国人投資家(一部、外国人投資家を真似た愚かで強欲な日本のハゲタカ投資家を含む)によって、日本企業がアメリカ型の経営に変貌しつつあることがわかるのです。
アメリカの株高を支える要因、それは日本にも大いに影響あり
アメリカで経営指標として重視されるのは、フリー・キャッシュフローやROEなど収益性や効率性を追い求めるものばかり。
キャッシュフロー経営を成り立たせつつ、自己資本利益率をアップさせ、PERを下げるために自社株買いを行う。そして発行済株式数が減ったところで配当をボンと出して配当利回りを確保して株価を吊り上げる。
単純化すればこれに尽きるのです。しかし、小手先の株価上昇策がいつまでも続くとはとても思えません。
いつか、無理がたたってダムが決壊する日が来るのではないかと考える今日この頃なのです。
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