2020年7月から新たな遺言書の保管制度が始まる

手紙



今年(2020年)7月から新しい遺言書の保管制度が始まります。高齢化が進む中、遺言はより一般的で身近なものに、そして安心なものに進化することになります。



遺言の現状


さて、現状の遺言の制度はどうなっているかといえば、大きく2つに分けることができます。

・公正証書遺言

法曹界をリタイアした元裁判官や元検事などがそのキャリアを買われてなるのが公証人(※)です。

この公証人がいるのが公証人役場。リタイアして出世などは考える必要もなく、がつがつしていないので、とても親切にいろいろと教えてくれるというのが私の印象です。

もちろん、すべての人がそうとは限らないでしょうが。

この公証人が遺言をする人から話を聞き、まとめてくれるのがいわゆる「公正証書遺言」です。

公正証書遺言を作成するには2人以上の証人が必要で、それなりの費用(数万円)がかかりますが、原本は公証人役場で保管してくれますから、紛失の恐れもなければ、改ざんされることもありません。また、公証人が作成するわけですから、形式不備が発生する恐れもありません。

故人の意思を確実に遺すことができるというわけなのです。

しかし、費用が高いことや証人が2人も必要であり、証人にすべてを聞かれるわけですから、その作成をためらう人も多いことは容易に想像できます。

・自筆証書遺言

その名のとおり、遺言者が自ら筆記して残すのが自筆証書遺言です。

今の世の中、ワープロが普及しているわけですが、ワードなどで作成することはできません。あくまで自筆が必要です(財産目録を除く)。

書式は厳格に決められており、ルールから逸脱するとその遺言は法律上、無効になってしまいます。例えば、書いた日を「〇月吉日」などとしたらダメですし、押印が必要であり、押印のない遺言もまた無効となってしまいます。

少々の勉強が必要であり、心配症の人には向いていないのかもしれません。

また、自筆した遺言は自宅の金庫やタンスの中、銀行の貸金庫などに保管することになるでしょうが、遺族が必ず見つけてくれるとは限りません。

せっかく書いたのに見つけてくれなければ意味をなしませんから、これまた心配です。

(※)公証人
国の公務である公証事務を担う公務員。公証人が担う公証事務は強制執行が可能である公正証書も含まれる。そのため、公証人は、高度な法的知識と豊富な法律実務経験が必要であり、かつ中立・公正でなければならない。
そのため、公証人は、原則として、判事や検事などを長く務めた法律実務の経験豊かな者でなければならない。
公証人は、公務員だが、国から給与や補助金など一切の金銭的給付を受けず、国が定めた手数料収入を得る手数料制の公務員とも言われる。


便利かつ安心な新しい遺言保管制度


「公正証書遺言」「自筆証書遺言」の弱点を補完した中間的な制度が新たにスタートする遺言の保管制度です。
(2020年7月10日からスタート)

以下はその流れです。

1.自筆証書遺言を法務局に持っていく。

2.自筆証書遺言の中身を遺言書保管官がチェックし、形式不備がないか確認する。

3.法務局は遺言書の原本を保管するとともに、画像データを残す。

4.本人が亡くなった場合、遺族が請求すると、法務局は担当官の証明書付きで画像データを印刷し、遺言の証明書として交付される。

このような感じとなります。

新遺言保管制度の特徴


この新遺言保管制度の特徴としては以下のような点が挙げられます。

・現行の自筆証書遺言は開封する際は家庭裁判所に持ち込んで裁判官が立ち会って、検認といわれる手続きを経ねばなりません。しかし、新制度では証明書の形式で交付されるので、検認の手続きは不要となります。

・相続人が遺言の存在がわからない場合、法務局へ照会すれば確認してもらえます。本人からあらかじめ、遺言を法務局に預けてあることを相続人に言っておけば安心だと思います。なにしろ中身を見られることもないうえで存在を知らしめておくことができるからです。

・新遺言保管制度には一定の費用がかかりますが、公正証書遺言よりはかなり安価となる見込みです。資産家でなくても気軽に利用することが可能です。


感想


日本公証人連合会のホームぺージを見ると、公正証書遺言の作成数は確実に右肩上がりで増加しています。

高齢者の数が増えているというのが最大の要因だと思いますが、街の本屋さんに行けばわかるように「終活」などという言葉も一般的になっております。

遺言を残しておくことは、その後の「争族」を防ぐ意味でも非常に有意義であり、残された親族が仲良くし続けることを可能とする手段なのです。

新制度の導入により、ますます遺言が身近になることは間違いありません。なにしろ故人の財産が醜い「争族」に発展し、親戚縁者がバラバラになっては元も子もありませんから。

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