毎月分配型がダメなら定率分配型。商魂たくましい投信業界

すっかり悪者扱いされ、見向きもされなくなりつつある毎月分配型投資信託。資産もファンド数も増え続けた時代はすっかり昔の話で、隔世の感があります。
しかし、転んでもタダでは起きない金融業界。新たに定率分配型なる投資信託が登場しています。
毎月分配型投信の弊害
金融庁が毎月分配型の投資信託を悪玉扱いしたのはそれなりの道理があるものです。
インカムゲインでもなく、キャピタルゲインでもなく、評価益でもない収益調整金(※)なる特殊な調整勘定をうまく利用して、あたかも儲かっているかのごとく、払い込まれたお金をただ単に分配してきたというのが実態です。
極論を言えば、預かったお金をそのまま返して、あたかも儲かったかのごとく顧客の目を騙してきたといってもいいでしょう。
高い分配金をえさに顧客を集めて収益調整金を増やし、それを元手に分配する。しかし、そんな無理はいつか行き詰まることは目に見えていたのです。
基準価額は嘘をつかず、10,000円スタートだったはずが、2,000円台やら3,000円台やらがゴロゴロ。
なんとか自転者操業を続けてきましたが、ついに行き詰まって分配金の引き下げが相次いだことはご存じのとおりです。
そして歯車は逆回転し始め、お金も集まらなくなりました。
※収益調整金
収益調整金は追加型株式投資信託において追加設定時に使用されるする勘定科目。収益調整金処理により、追加設定による既存の受益者の収益分配可能額が希薄化しないようにしている。
収益調整金は追加型株式投資信託において追加設定時に使用されるする勘定科目。収益調整金処理により、追加設定による既存の受益者の収益分配可能額が希薄化しないようにしている。
定率分配型の投資信託が登場
毎月分配型は無理がある、しかし分配金でお客を集めたい。このジレンマから生まれたのが「定率分配型」の投資信託なのだと思います。
定率分配型投資信託の仕組みは端的にいえば基準価額の上下に比例して、分配金も上下するという仕組みです。
基準価額が下がれば、分配金も下がるので毎月分配金型の失敗の轍を踏まず、持続可能なファンドモデルといったところです。
定率分配型投信は2019年末で18本設定され、資産総額で1,000億円超となっています。この1年ちょっとで約2倍に増えてきています。
本来あるべき姿は・・・
定率分配型のモデルは毎月分配型よりもマシであることは間違いありません。しかし、根本的な改善となっているとも思えません。
本来、分配金の原資はインカムゲインとキャピタルゲインのみに限定すべきだと思います。言い換えれば実現利益です。
評価益は当てにはならないし、ましてや収益調整金などという勘定から分配するなどもってのほか。儲かった分だけ分配する。それならば無理もなく、ごまかしも利かないので、ファンドごとの比較もしやすいはずです。
分配金が多くても基準価額が下がっていないファンド。それは運用がうまいと一目でわかります。分配金が少なく、あるいは無く、基準価額が下がっていれば運用が下手だとわかります。
投資家保護のためにぜひ規則を改正してもらいたいものです。
【関連記事】
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