新自由主義が国際的なデフレを生んでいると確信

駅



2018年に自ら命を絶った評論家、西部邁さんと若手論客との座談番組がYouTubeにあったのでぼんやりと眺めていたのです。番組のタイトルは西部邁ゼミナールでした。

そのトークの内容はなかなか秀逸で眠気が覚めた思いだったのです。



参加メンバー


番組はどうやら2012年に収録されたもののようです。西部さんの参加メンバーはいずれも若手論客。

施 光恒さん(九州大学大学院 准教授(当時))
中野 剛志さん(京都大学大学院 准教授(当時))
柴山 桂太さん(滋賀大学 准教授(当時))

いずれの方も当時40歳前後の若手論客です。頭脳明晰な西部さんのお眼鏡に合うインテリ集団といったところでしょうか。

中野剛志さんは「目からウロコが落ちる奇跡の経済教室」(基礎知識編と戦略編の2冊)を昨年上梓し、ベストセラーになりました。

この本はホントによくできていて、いかに今まで庶民がビジネス経済学者や財務官僚に騙されてきたかがよくわかります。今からでもご一読をお勧めします。

トークの内容


まずはTPPの話です。2012年でしたからTPP論議真っ盛りだったのだと思います。

経済評論家の勝間和代さんがTPPに賛成していた話から入ります。勝間さんの弁ではアジア諸国でTPPという共通のプラットフォームを作れば経済活動はうまく回るという単純な論法であったといいます。

また有名な竹中平蔵さんの話も出てきます。

竹中さんの主張はもちろん自由貿易擁護。アダム・スミス以来、自由貿易こそが国家間の利益であるとの論法です。

しかし、自由貿易が相互に利益となる前提は、

・資本移動が起こらない
・労働者が移動しない
・失業者がいない

など、今日の世界経済の実態とはかけ離れたものです。

現代社会においては、工場は海外に移転して労働者は現地採用。もちろん資本移動など瞬時のごとく行われます。

失業者がいないなど夢のまた夢。ヨーロッパやお隣韓国などはとりわけ若者の失業率が高くなっており、社会が分断化されています。

そもそも、アダム・スミスの経済学はイギリスの利益をいかに最大化するかを念頭においたものであり、世界全体を豊かにしようなどというものでもありません。

底辺の競争で労働者は貧しく


新自由主義主義による自由貿易と労働者の移動。これは底辺の競争を生み出しているといいます。具体的には、より人件費の安い国を目指して、企業がどんどん移転していくことです。

人件費の安い中国へ移転し、中国の人件費が高くなれば次はベトナムなどと・・・。

これにより人件費は極端に抑えられ、人々の消費、購買力は弱くなり、世界的にデフレ傾向となるのです。これはEUの失敗を見れば火を見るよりも明らかなのです。

しかし、新自由主義を否定すれば、自由主義者は「じゃあ鎖国すればいいのか?」などという極論で反論してきます。

答えは0でも1でもなく、その間の程よいバランスをとれるところにあるに違いありません。

新自由主義で政治責任は問われない


ときの政権にとって、経済が低迷することは命とりになりかねない重要問題です。

しかし、新自由主義は意外なことに、現政権にとっても好都合となるのです。

なにしろなんでも自己責任の一言で片付けることができるからです。なんでもかんでも自由化、規制緩和をし、競争の土台を作り上げる。そして負けた者には「努力が足りなかった」の一言で終了。

政治は経済活動には介入せず、その結果には無責任を決め込むことができるのです。そして新自由主義のもとでは政権は長続きしがちとなるのです。

今の安倍政権はまさにその典型例ではないでしょうか。

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