ネット証券の雄、松井証券の松井社長退任へ

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一時代が終わったといったら大げさかもしれません。日本におけるネット証券の草分け、松井証券(8628)の松井道夫社長が退任することとなりました。



退任の理由


御年67歳。まだまだやれる年齢です。

しかし、時代の流れは早い。とりわけネットの世界においてはなおさらです。松井社長自身、自分の価値観が時代にそぐわなくなってきていると感じていたと語っています。

若い世代にバトンタッチして、時代の流れに沿った経営をしてもらいたいということだろうと思います。

退任を決めたのは数か月前ということで、ネット証券の手数料無料化が加速した時期と見事に重なります。

これは憶測ですが、auカブコム証券が現物株の取引手数料の無料化を目指すと発表した時点でビジネスモデルに限界を感じたのではないのではないかと思います。

それにしても解せないのは、年頭のあいさつではまだまだ社長続投の意欲を示していた点です(詳しくは関連記事をご覧ください)。

それからわずか数か月の間にどのような心境の変化があったのかは知る由もありません。

松井社長の功績


松井証券はもともと場末の地場証券でした。たしか、松井社長は松井証券の元社長の婿養子として入社し、社長の座についたはずです。

他業界から証券業界へと転身しただけに、証券業界の常識が非常識であることを肌で感じたのでしょう。何しろ当時は護送船団方式の金融行政が行われており、株式の売買手数料はどこの証券会社でも一律でした。

松井社長はそんな証券業界の業界秩序を否定し、また打ち壊すサービスを導入してきました。対面営業からネットへの移行もその一つです。信用取引とネット取引をうまく結びつけることで成長し、高収益企業へと変身させました。

しかし、業界の革命児も、既存の業界秩序を打ち破ることに成功したことに甘んじ、単純なビジネスモデルの維持に終始したため、成長がとん挫したのです。

弱者のランチェスター戦略を強者になっても続けたために会社の器は大きくはなりませんでした。会社の器は結局社長の器に左右されるものです。

SBI証券や楽天証券など、知名度が高く、また複合的なサービス展開で相乗効果を発揮する会社にじりじりと後塵を拝していくこととなります。

それが、今回の退任に結び付いたであろうことは容易に想像できます。

松井証券の今後は・・・


松井証券はいわゆる同族企業です。

株主構成を見ると、一族の資産管理会社らしき企業が2社あり、持株比率は2社合計で約47%です。その他にも一族個々人名で合計約10%の株を保有しており、すべてを足すと約57%にもなります。

ところで後任社長には一族ではない方が就任する予定です。しかし、IR情報を見ると新任取締役候補には若い松井姓の方がいたのです。おそらくご子息ではないかと思われます。

1987年生まれですからまだまだ30歳ちょっと。しかし、将来の社長候補であることは確実です。なにしろ一族で過半数の株を握っているのですから、役員人事などどうにでもできるでしょう。

となると後任社長はあくまでリリーフ登板ということになります。40歳で社長就任と想定すれば、リリーフ期間は長くても7、8年といったところでしょうか。

それにしても強面社長の退任で、松井証券がどのような変貌を遂げるかが見ものです。

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