コロナ騒動で改めて浮き彫りとなった日本の課題

書類



今回のコロナ騒動では日本の弱点が白日の下にさらされ、今後の教訓としなければならない点が多々明らかとなりました。

ところで、京都大学の藤井聡教授が書かれた『MMTによる「新」経済論』を読み進めていたら、まさに上記と重なるような日本の課題が羅列されていたのです。しかも、この本は新型コロナ騒動が始まる前に書かれた本なのです。

コロナとは直接関係がないのです。コロナ騒動前から日本の課題は認知されていたにも関わらず、放置され続けていたとしか思えないのです。

そこで、上記書籍に書かれている項目を列挙し、日本が抱える課題と今後の対応策を考えてみたいと思ったわけです。



1.介護・医療供給量の強化


高齢化を意識した強化策ではありますが、パンデミックへの備えが必要だと今回、再認識させられたわけです。

幸いまだ日本の医療制度は世界に比べて秀でています。しかしながら、緊縮財政の呪縛により病床数の削減が検討され、介護報酬も低水準で、資格をもっていながら介護業界で働かない人がごまんといるのです。

医療、介護報酬を充実させておくことが今後のパンデミックへの備えとなります。

興味深いデータがあります。以下は横軸に高齢化率、縦軸にGDPに占める医療費の比率を取ったグラフです。

20200420iryouhi.jpg
(出所:社会実情データ図録)

極めて特徴的なのがアメリカです。高齢化は欧米諸国の中では低いほうに属するのに、医療費負担が著しく高い。

これは規制緩和による医療の自由化が進んでいるからだと思います。株主資本主義の中で医療の自由化を進めればどうなるかをアメリカが端的に示しています。

2.食料自給率の確保


日本は先進国の中でもとりわけ食料自給率が低い国です。

以下は1960年からの日本の食料自給率の推移を示しています。一貫して右肩下がりといった傾向です。

20200419syoku1.png

米だけはなんとか保護貿易によって自給自足できていますが、今時、米だけ食べる人がいるわけもなく・・・。カロリーベースではなんと4割を切る低水準の自給率しかありません。

これは世界各国の状況を見ても非常に低いことが下のグラフからもわかります。

20200419syoku2.jpg
(出所:社会実情データ図録)

さて、今回のコロナ騒動で目に余るのはマスクの不足です。そして、自国にマスクが足りないのに他国に輸出してくれるわけがないのはマスクに限ったことではありません。

不足すれば死に直結する食料となればなおさらです。自国民が飢えてるのに輸出していたら暴動が起こるでしょう。

気候変動や害虫や植物の病気の発生、噴火による被害など食料が世界的に不足する突発事故は数多くあります。そんなとき、日本に優先的に食料を融通してくれる国があるわけがありません。頼りになるのは国内の農業しかないのです。

なんでもかんでも自由貿易にしてしまったら、土地が狭い日本の農業が価格競争に敗れることは自明の理です。

食料自給率(カロリーベ―ス)でせめて西欧諸国なみの8割を維持できるまでは、農業製品については保護貿易をすべきだと思います。

3.資源・エネルギー自給率の向上と輸入価格の引き下げ


以下は世界主要国のエネルギー自給率です。(2013年と少々古いですが)

20200419energy.jpg
(出所:社会実情データ図録)

それにしてもこれまた日本は突出して低い。原油はほとんど出ないし、石炭もまたしかり。多少、自然エネルギーが増えているとはいえ、お茶を濁す程度のものです。

この問題は本当に難しい。エネルギーがなければ、食料生産もままならないため、食料自給率にも多大な影響を与えます。

ウルトラCとなる解決策は見当たりませんが、石油輸入の中東アジア依存度を下げ、原子力発電を安全を確保しつつ再開していくくらいでしょうか。ロシアから石油パイプラインを引くというのも大いに魅力的なアイデアです。

4.物流・輸入コストの縮減


電子商取引が増加の一途をたどり、宅配需要は旺盛であるにもかかわらず、トラックの運転手は高齢化しており、慢性的な人手不足です。

しかし、一人の運転手で何台ものトラックを高速道路を連ねて走るなど、技術革新により、人手不足解消の流れも出てきています。

物流が止まれば、人が死にます。何しろ首都圏には大量の人口がおり、食料は各地からトラックで運ばれてくるからです。人間の体に例えれば、赤血球というところでしょうか。生存に必要な酸素も赤血球という物流がなければ体に行きわたらなくなります。

5.防災・強靭化


日本は災害の多い国です。地震に、台風、最近は豪雨による被害も目立ってきました。

緊縮財政の悪弊で、公共事業費をケチっているため、まともな対応がなされず、デフレで約20年間公共施設は劣化し続けました。

日本がいかに地震大国かは下の図をみればよくわかります。日本を震源とする地震がいかに多いことか。

20200420jisin.jpg

南海トラフ地震が起これば、最大で30万人以上の死者が見込まれています。

20200420jisin2.jpg
(出所:社会実情データ図録)

デフレ脱却のためにも政府は国債を増刷し、国土の防災を進めて人的、物的被害を最小限に食い止める必要があります。

そのほうが結果的に被害も小さくなり、コストも安くなるのですから。

6.地方活性化


日本の人口はあまりに東京圏に偏りすぎています。今回のコロナウイルス騒動を考えても、満員電車がいかに感染リスクを高めるかは素人でもわかることです。そして、首都機能が麻痺すれば日本全体が機能不全に陥ることは明らかです。

災害立国であり、首都直下型地震の発生可能性も高いわけですから、リスク分散のためにも地方都市を活性化させ、人口を分散することでリスクの低減を図る必要があります。

以下のグラフを見れば、日本の首都圏にいかに人口が集中しているかがわかろうというものです。

20200407tosi.jpg
(出所:社会実情データ図録)

地方を活性化するには、交通網の整備が不可欠です。国鉄をバラバラにして民営化したことは大失敗でした。

人口の多い、儲かる会社(JR東日本やJR東海)はますます発展し、首都圏の人々の利便性が上がる一方、過疎地域のJR北海道などは赤字路線が相次ぎ、廃線せざるを得ません。

鉄道がなくなれば人口流出につながり、ますます首都圏へ人口が集中するという悪循環を生み出しています。

7.科学技術力の強化


日本はデフレにより大学の研究費が削減されるなど、将来の科学技術発展のための基礎研究にかける予算が少なくなっています。

下のグラフは主要国の科学技術研究開発費の推移を表しています。

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(出所:三橋貴明氏「新世紀のビッグブラザー」)

中国の伸びが著しい。中国がここまで発展したのは科学技術に惜しみなく資金を投入したという要因が大きいことは明らかです。

それに比べ、財政の縛りがきつい日本やEU諸国の停滞が目立ちます。日本に至っては若干の減少といった感じ。これでは、将来、日本からノーベル賞をとる学者がいなくなるという意見にも賛同せざるをえません。

8.防衛力の強化


アメリカの空母の乗組員が新型コロナに感染し、現状、軍事バランスが大きく崩れています。

この機に乗じてかは不明ですが、尖閣諸島に中国船がやってくる頻度が上がっている模様です。また、沖縄と宮古島の間を中国の軍艦が通過するなどいかにも日本を舐め切った行動を行っています。

日本は自国の国防の多くをアメリカに依存しすぎているため、アメリカ様がいなくなれば、防衛力が極端に下がってしまいます。

以下は2018年の主要国に軍事予算(単位:100万ドル)です。

1.アメリカ 648,798(約70兆円)
2.中国 249,997(約27兆円)
3.サウジアラビア 67,555
4.インド 66,510
5.フランス 63,800
6.ロシア 61,388
7.イギリス 49,997
8.ドイツ 49,471
9.日本 46,618(約5兆円)
10.韓国 43,070

それにしても、中国の軍事費の伸びは著しい。アジアの軍事バランスは明らかに歪になっています。中国一強の構図です。

それに比べて日本の国防はアメリカ頼りというお寒い状況が戦後70年以上に渡って続いています。

特徴的なのはロシアです。ロシアの軍事費はアメリカの約10分の1。それでも軍事力を背景とした強権外交ができるのはなんといっても核兵器の数の多さです。

核弾頭の数ではアメリカと均衡しているからこそ、経済力は大きくないにもかかわらず、国際的発言力が大きいというわけです。

日本は当然憲法改正をし、軍事予算を増大し、自立した軍事的均衡を図るべきだと思うのですが、安倍政権での実現はいよいよ難しくなり、今後の見通しも暗いといわざるを得ません。

個人的見解


近年、中国は世界の工場と化しており、日本の消費財の多くも「Made in China」。安い洋服や電化製品などのタグや段ボール箱をみれば、そのほとんどが中国製です。

サプライチェーンの見直しは必須です。マスクをめぐる混乱がその典型です。日本のマスクの8割が中国製品だったがために、供給は一気に途絶えました。

とにかく、やらなくてはならないことは明らかなのです。今回のコロナ騒動がそれを浮き彫りにしただけです。

やらなきゃならないことをやらないこと、これこそが「不作為」の罪です。そして、その罪は政治家が負うべきものに間違いないのです。

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