良いインフレ、悪いインフレ。コロナ騒動から考える

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ここ30年というもの、モノの値段はほとんど上がらずデフレが継続してきました。

30歳代以下の人はモノの値段が上がっていくインフレというものをほとんど経験したことがないと思います。とりわけ短期間の急激な物価上昇など未経験でしょう。



コロナ騒動での超インフレ


しかし、今回のコロナ騒動ではそれが起こりました。「マスク」です。

マスクが突然希少価値を持つものとなり、値段が非常に上がってしまいました。しまいには供給が需要に追い付かないため買いたくても買えないという悲惨な状況となったのです。

これは経済学でいうところの「インフレ」です。しかし、良いインフレではありません。

「良いインフレ」とは


景気が良く、皆の所得が増えて様々なモノやコトの消費がたくさんできることに伴って、モノの供給が需要に間に合わなくなってくる。

そこで、企業は新たな設備投資をしたり、人を多く雇うことにより生産性を向上させることで、需要と供給のバランスを取っていく。

新たな設備投資や失業率の低下、賃金上昇がさらに消費を加速し、またバランスが崩れていき、さらなる生産性の向上が図られる。

この連鎖により、所得が増えることによってモノの値段が上がっていくのは「良いインフレ」です。

「悪いインフレ」とは


一方、景気が悪くて所得が増えないのにもかかわらず、モノの値段が上がっていく。お金がないのにモノの値段が高くなるのですから、人々は貧しくなる。

これは悪いインフレです。

ではなぜ景気が悪いのに物価が上がるのでしょうか?これは今回のマスクを見れば明らかです。

本来、モノが余っているからデフレ(不況)になるにも関わらず、不況なのにモノがないという悲惨な状況です。所得が増えているわけではない(むしろ減っている)にも関わらずモノの値段が上がるのですから最悪です。

この状態が「スタグフレーション」です。

コロナ騒動でマスク・スタグフレーションが起こったのです。(アベノマスク首を長くして待ってます。)

ようやく、スーパーや薬局などでも少しずつマスクが手に入るようになってきているようですが、高いし、お一人様1つなどと制約があります。多少ましになってきたとはいえ、マスク・スタグフレーションは依然として継続しています。

物価の長期的推移


以下は1970年代からの消費者物価指数の推移を表しています。(欧州4か国はイギリス、ドイツ、フランス、イタリアの平均)

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(出所:社会実情データ図録)

石油ショックなどにより、日本もスタグフレーションに陥る場面もありましたが、1990年代半ばまでは概ね物価水準を適正なインフレ率で保つことができました。

しかし、それ以降は物価上昇どころか物価下落が継続し、安倍政権になってようやく少々好転はしたものの、政策がちぐはぐなために未だインフレ目標2%が達成できません。

今回のコロナ騒動でその達成はますます遠のきました。日銀も半ばあきらめているようです。

また失業率の推移を見れば、物価の下落が失業率の上昇に結び付いていることは明らかです。

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(出所:社会実情データ図録)

それにしても、気になる点があります。企業がこのコロナ騒動でバタバタ倒産し続けると、供給不足に陥るのはマスクだけではなくなります。

失業者が増えて所得が下がる不況なのに、モノの生産力が衰退、崩壊してしまうために物価が上がってしまうという危惧です。

戦後などはその典型でしょう。工場は破壊され、買いたくてもモノがない。それと同じことが起こる可能性があります。これは悪いインフレです。最悪、ハイパーインフレ(※)になってしまいます。

ハイパーインフレは国債を大量に発行するために起こるのではありません。モノの生産が滞り、買いたくても、とんでもないお金を出さないと買えなくなるから起こるのです。「マスク」を思い出せば明らかです。

それなのに国債を大量発行するとハイパーインフレになるなどという主張は、原因と結果をまるで理解していないド素人の戯言としかいいようがありません。

(※)ハイパーインフレ
物価上昇率が天文学的な数値に達するインフレのことをいう。明確な基準はないが、アメリカの経済学者、フィリップ・ケーガンは物価上昇率が毎月50%を超えることと定義している。50%の物価上昇が継続すると、1年後には物価が129.75倍に上昇することになる。また国際会計基準では3年間累計で100%(年率で26%)以上の物価上昇をハイパーインフレと呼んでいる。


政府がなすべきこと


この危機に政府がなすべきことは供給能力を落とさせない(企業をつぶさない)ことです。

そのためには政府は国債を大量に発行して需要を創り出し、需給バランスを適正に保つことです。(100兆円以上は必要と思われます。)

財政赤字などを気にしているとまさにスタグフレーションが起こります。失業者が増え、モノが不足し犯罪が増える。荒んだ世の中です。(既に荒みつつありますが)

以下は1990年、2000年、2005年の犯罪率の国際推移です。日本に目を向ければ、やはりデフレが進んだ2000年に犯罪率が高くなっています。

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(出所:社会実情データ図録)

財務官僚はいいでしょう。なにしろ失業する心配がありませんから。

民間はそうはいきません。こんな時期に解雇されれば新たな職も見つからず路頭に迷ってしまうのです。

官僚に当事者意識を求めても無駄というものです。所詮他人事なのですから。政治家は官僚の言うことではなく民間人の言うことに耳を傾けなければならないと思う今日この頃なのです。

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