証券業界の経済観念。業界の知的レベルが疑われる

証券会社といえば経済の専門家と考えるのが普通だろうと思います。投資に役立てるために様々な経済現象を分析し、顧客に還元していくのですから。
そして、全証券会社が加入している(加入義務はない)のが「日本証券業協会」です。
証券業協会のトンデモ金融教育
その日本証券業協会のWEBサイトに「金融教育応援コーナー(先生・教育関係者向け)」なるコーナーがあります。
教育関係者向けとあるからには、知識の最上流にあるものであるはずです。
5分で話せる金融経済(授業を面白くする私の鉄板ネタ)というコーナーの2018.10.25のVol.81版に「プライマリーバランスはなぜ重要なのか」という、錆びた?鉄板ネタを発見し、その内容に驚きを隠せませんでした。
全文を載せるわけにもいかないので、驚きのトンデモ勘違い、知的レベルが疑われる箇所を抜粋してみます。
トンデモ金融教育(その1)
「税がなければ国は様々な事業やサービスを行うことができません。給料が入ってこないと生活できないのと同じことです。」
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完全に家計を国家財政を混同しています。例えとしては使いやすいのはわかりますが、内容が間違っていてはどうしようもありません。
国家は税金を取ってから支出するのではなく、最初に国債を刷って支出し、後から税金を取っているだけです。(スペンディング・ファースト)
トンデモ金融教育(その2)
「当然、支出は収入の範囲内で行うのが原則です。」
「入ってくるお金の三分の一ぐらいが借金ということですから、家計で考えればこれは大変なことです。ただし、これらの借金の多くは国内の金融機関等から借りており、海外からの借り入れは6%程度しかありません。つまり家庭で言えば、世帯主が借りている大半は家族からのもので他人から借りているのはそれほど多くないということです。したがって海外からの借入率が日本より高いギリシャやアルゼンチンのように資金繰りに行き詰ってすぐに財政が破綻するということは考えにくいと思います。」
「入ってくるお金の三分の一ぐらいが借金ということですから、家計で考えればこれは大変なことです。ただし、これらの借金の多くは国内の金融機関等から借りており、海外からの借り入れは6%程度しかありません。つまり家庭で言えば、世帯主が借りている大半は家族からのもので他人から借りているのはそれほど多くないということです。したがって海外からの借入率が日本より高いギリシャやアルゼンチンのように資金繰りに行き詰ってすぐに財政が破綻するということは考えにくいと思います。」
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これまた家計と国家財政の混同です。単純思考極まりない。
国内から借りてるから大丈夫だと思います的記述。経済をよく理解していないのでしょう。
国外から借りていても、円で借りているのならばまったく問題ありません。ギリシャはユーロ加盟国であり自国通貨を持たないために破綻し、アルゼンチンはドル建て債務のために破綻しました。
自国で通貨を発行できない以上、債務を返済するには、ギリシャの場合はユーロ、アルゼンチンの場合はドルを調達するしかありませんが、それができなかっただけです。
もはや家で家計簿付けてるだけレベルです。家計の教育をするならそれで結構ですが、天下国家の財政を教育するならば、家計簿レベルとはきちんと分けて教育してもらいたいもんです。
トンデモ金融教育(その3)
「重要なのはこのプライマリーバランスです。なぜならこれが赤字である限り借金は減らないどころか増えていってしまうからです。逆に言えば、プライマリーバランスがプラスであるという状況が続けば国の借金もいずれ無くなります。政府は財政収支を健全化するために、このプライマリーバランスの黒字化を当初2020年に達成するという目標を掲げていましたが、現状では困難な状況となっており、2025年までにずれ込む模様です。」
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もうあきれ果てるしかありません。国の借金がなくなることを是としているようですが、借金の反対側には資産があるという単純なバランスシートも理解していないかのようです。
日本は現在、バランスシート上、債務超過となっていますが、企業同様に資金繰りがつけば破綻など起きません。もっとも日本国は通貨を発行できるのですから、そもそも破綻のしようがありませんが・・・。
政府の負債だけ見て、「1,000兆円超えてる。大変だ!」というならばトヨタは「有利子負債20兆円抱えて大変だ!」という論理になりますが、トヨタの経営は現状盤石です。それ以上の資産を充分に保有しているからです。
そもそも、政府の借金などいつまでも返済しなくても構いません。ずっと借り換えしていけばよいだけです。なんなら、永久債でも発行すれば償還の手間も省けます。
なぜか結論はまとも
「税収を増やすためには経済成長が欠かせません。経済成長によって企業収益が増えれば法人税も増えますし、賃金が上がることで所得税も増えるからです。つまり最も大事なことは制度や税率を変えて増税するのではなく、経済成長に結びつくような政策を取ることだと言えるでしょう。」
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最後のほうにまともなことも書かれていました。しかし、前提となる考えが的外れなのですから、ただ単に結果オーライの記述でしかなく、思考回路が疑われます。なぜならプライマリーバランスを黒字化しようとすれば経済成長に結びつくような政策の実行は不可能だからです。
なお、ただし書きには「執筆者個人の見解も含まれていることをご理解のうえ、ご利用ください。」と組織としての保険がかけられてはいます。ただ「内容については万全を期しておりますが」との記載もあり、これで万全なの?と首を傾げたくもなります。内容はともかく誤字脱字はないようですので一応チェックはしているのでしょう。
それにしても経済の専門家たる証券会社のとりまとめ役ともいえる日本証券業協会が出している金融教育情報がこの程度の経済認識だとは・・・。
証券業界が苦しむ理由もわかろうというものです。時代遅れの知識を顧客にばらまけば今の顧客は賢いから信用を無くして離れていくだけです。証券業界が苦しんでいるのはこのようなレベルの低さにも起因していると考えられます。これは、ましてや教育関係者向けの発信なのです。
これらのトンデモ金融教育を先生がたが子供たちに発信していったら・・・。誤った認識が拡散され、日本のデフレ脱却がますます遠のくことは間違いありません。子供たちの未来が暗いものになってしまいます。錆びついた金融教育はやめてもらいたいと思うのでした。
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