Jリートの構造問題再び(利益相反)

Jリートの中でも、とりわけコロナ禍による影響を被っているのがホテル型のJリートであることはご存じのとおりです。
ホテル型Jリートの大手、インヴィンシブル投資法人(8963)が前期よりも予想分配金を98%減らすという事態に市場はショックを受けました。相当程度に悪くなることは予想されていましたが、その予想をはるかに上回る業績悪化です。
大手テナントを救うために、2020年3月から6月までは固定賃料までも減免し、さらにリート側が建物の管理費までも負担するといいます。
この負担に関して、Jリートが抱えている利益相反という構造問題が再び浮上してきました。
過去にあった問題
15年ほど前、数多くのJリートが行政処分を食らい、投資家の信用を失墜させることになりました。
概要として記憶しているのは、スポンサーである親会社の不動産会社が高値で自社の不動産を処分したいために、不動産鑑定をごまかしてJリートに売却して売り抜けるといった問題です。
不動産会社は投資家の利益を犠牲にして自社の利益を優先し、スポンサーとJリートの投資家との利益相反問題が浮き彫りとなりました。
このような事態があったため、Jリートの信頼は一時期失墜しました。
Jリートが抱える利益相反問題
行政処分により個別案件は処理されていきましたが、根本的な改善が図られたわけでもなく、現状でも以下のような疑念は払拭されていません。
・スポンサーである親会社の不動産会社が所有する物件を高値でJリートに売却しているのではないか。
・Jリートの保有ビルにスポンサーの親密企業を安い賃料で入居させているのではないか。
・スポンサー系の管理会社を雇い、高い手数料を払っているのではないか。
・Jリートの保有ビルにスポンサーの親密企業を安い賃料で入居させているのではないか。
・スポンサー系の管理会社を雇い、高い手数料を払っているのではないか。
インヴィンシブル投資法人に対する不信
今回、話題を振りまいているインヴィンシブル投資法人の問題は再びJリートが抱える構造問題を浮き彫りとさせました。
インヴィンシブル投資法人が保有しているホテルの運営会社、マイステイズ・ホテル・マネジメントとインヴィンシブル投資法人は、双方ともアメリカの投資会社、フォートレス・インベストメント・グループの傘下です。
フォートレスは日本でホテルを次々と買収し、マイステイズに運営させました。軌道に乗るとホテルはインヴィンシブル投資法人に次々と売却され、これが繰り返されることで急激に規模の拡大を図ってきました。
今回の救済策は、一部投資家から、投資家のみに犠牲を押し付けているのではないか?スポンサーであるフォートレスがもっと多くの支援をすべきではないか?との不信感が出ています。
しかし、フォートレスの財務内容はベールに包まれていてわからない。ゆえに疑念が深まるといった図式です。
他のJリートにも同様の問題が
上記のような問題はインヴィンシブル投資法人のみが抱える構造問題ではありません。わかりやすいのはイオンリート投資法人。
イオングループ内で多くの取引が完結するため、投資家との利益相反が発生しやすい態勢であるといえるでしょう。もちろん、あくまでも可能性の話です。
もっとも、イオンは上場していますから、財務内容も公開されている点が大きな相違点です。
アメリカと日本の違い
同じリートですが、アメリカと日本ではその運用形態が大きく異なります。これがJリートの利益相反が問題となる原因の一つと考えられます。
アメリカ
リート自らが従業員を抱え、物件の売買や管理を行う。運用者は独立した判断でリートの価値最大化を目指す「内部運用型」の形態をとる。
日本
「外部運用型」の形態をとっており、物件の売買や管理は外部の運用会社が行う。
リート自らが従業員を抱え、物件の売買や管理を行う。運用者は独立した判断でリートの価値最大化を目指す「内部運用型」の形態をとる。
日本
「外部運用型」の形態をとっており、物件の売買や管理は外部の運用会社が行う。
この相違には歴史的背景があります。
日本では、Jリートはバブル崩壊で価値が毀損した不動産を多く抱える不動産会社がその物件の売却先を確保するという目的で活用されました。バブル崩壊の出口戦略の一つとして利用されたためだと考えられます。
まとめ
このような非常事態にあっては、テナントの救済を図るために家賃減免措置を図ることは投資家にとっても長期的視野では利益となると考えられます。まずは三方一両損で我慢するしかありません。
しかし、そこに不透明性さがあってはなりません。正確で透明な情報開示がなければ、投資家は納得して負担に応じることができなくなってしまうからです。
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