アメリカン資本主義の実態

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先日お亡くなりされた西部邁先生が出演していた東京MXテレビの西部邁ゼミナールという番組でアメリカ在住の評論家、伊藤貫先生がゲスト出演された際の発言に非常に興味深いものがありました。
(今でもYouTubeで見ることが出来ます。)

蛇足ですが、伊藤貫先生はアメリカに住んでいるので、アメリカ事情に非常に精通しており、アメリカから見た日本を第三者的な立場で見事に分析してくださいます。それ以上に面白いのが、独自の視点や歴史観から物事を分析し、人間への深い洞察力がある点です。

それでは、その発言の要旨をご紹介します。


『1947-1975年まで、アメリカ人の平均的な労働者の労働生産性は98%上昇したんですが、その時代にアメリカの労働者階級と中産階級の実質賃金も95%上がっているんですね。労働生産性が98%上がると、実質賃金も95%上がると。ところが1976-2013年までの統計を見ると、労働生産性は85%くらい上がっているんですが、平均給与は4%しか上がっていないんです。そうすると、労働者が一生懸命努力して、労働生産性を8割9割あげても、自分たちのところには40年で4%の賃金しかあがってない、ほんのびた一文くらいしか入ってこなくて、あとは全部株主に取られてしまう・・・』


それではなぜ、アメリカが株主至上主義に移行してしまったのか?

その理由として、戦後1980年頃までに企業利益に対する強力な利害関係者として機関投資家が台頭してきたからという意見があります。

こうした機関投資家は、物言う株主として、企業に株主利益の最大化を求めてきました。その力が強大化したので、1976年以降労働者の実質賃金はあまり上昇しなかったと考えます。

そして、企業はその要求に応えるため、短期的な利益追求を重視し、その要求に応えることのできるリストラ型のプロ経営者を雇い、巨額の報酬を払い業績を向上させるという構造が出来上がりました。

その結果、株価は上がったのですが、その利益はプロ経営者、ヘッジファンド経営者などが集中的に得るという偏った構図が出来上がりました。

労働者のための機関投資家が、結果的には一部経営者や資本家の利益に貢献してしまったというのは大変皮肉な結果です。

しかし、労働者としても救いはあります。

1980年頃から401Kと呼ばれる確定拠出年金が普及し始め、積極的に株式投信で運用すればその利益が老後に還元されることとなります。ある種、分配の方法が変わっただけだとも考えられます。また、労働者も少ないながらも株式に投資すれば、賃金が伸びなくてもキャピタルゲインという形で資産を形成できます。

もっともアメリカ人の消費意欲は旺盛で、しかも格差が広がっているため投資するほどの余裕がない人々も多いのでしょう。その不満が鬱積してトランプ大統領の登場となったのだろうと思います。


日本でも外国人投資家の比率が増えるに従い、徐々に物言う機関投資家が増えてきているようです。これはある種株価にとっては好材料ともいえますが、労働者の賃金が増えない要因ともなり、ジレンマに陥ることとなります。

日本の労働者も確定拠出年金や株式、投資信託での運用を積極化して、資本家のみにうまい汁を吸わせないという心構えが必要になっていると思います。持たざるリスクを回避するということですね。


自滅するアメリカ帝国 日本よ、独立せよ (文春新書) [ 伊藤貫 ]



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