東証の存在感が相対的に低下。PTSの存在感高まる

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かつて株式取引において証券会社が顧客から注文を受け付けた場合は、必ず証券取引所に注文を流させなければなりませんでした。これは取引所集中義務と呼ばれていました。

しかし、金融ビッグバンの一環で、多様化する投資家のニーズに応えるため、1998年12月に取引所集中義務は廃止されたのです。

そして、最近ではネット証券によるPTS(私設取引システム)(※)での株式売買が急拡大していています。

(※)PTS
証券会社が独自に開設している市場システムで投資家は証券取引所を経由せずに株式を売買できる。証券取引所の取引時間外にも売買が行える。




日本のPTS


日本で運営されているPTSは、以下の2つです。

ジャパンネクストPTS(SBIジャパンネクスト証券株式会社が運営)

取引時間(日本時間)
デイタイム・セッション: 08:20~16:00
ナイトタイム・セッション: 16:30~23:59

営業日
取引所と同じ営業日

チャイエックスPTS(チャイエックス・ジャパン株式会社が運営)

取引時間(日本時間)
8:20~16:00

営業日
取引所と同じ営業日


チャイエックス・ジャパンとは?


SBIジャパンネクスト証券はともかく、チャイエックス・ジャパンとはあまり聞きなれない会社です。

いったいどのような会社なのでしょうか。

チャイエックス・ジャパン
アメリカの証券会社、インスティネットが創業株主となり2007年に開業し、急速に市場シェアを伸ばしている。注文執行の分野において「チャイエックス」の名をグローバルに浸透させた。日本では2010年7月から業務を開始している(日本での会社名はチャイエックス・ジャパン)。チャイエックス・ジャパンは、日本株式のPTSの運営を行っている。


PTSでの取引規模


PTSでの株式取引は2020年4月に8%となり、過去最高となりました。

上記2社の売買代金は6兆円弱。前年同期比で2倍になっています。

増加の背景として2点の要因があります。

(要因1)個人投資家の逆張り注文増加


コロナ騒動で株価が急落した3月後半から4月にかけ、日経平均2万円割れをチャンスと見た個人投資家がかなりの逆張り注文を入れてきました。

以下はここ数か月の日経平均の値動きです。

20200617PTS.jpg

赤丸部分が個人投資家が積極的に買い注文を入れた時期です。

個人投資家の株注文のほとんどを受注するネット証券は東証とPTSとの株価を比較し、より有利な価格で取引ができるSOR(スマート・オーダー・ルーティン)(※)で顧客の注文を執行しているケースが多くなっています。

膨れ上がった個人投資家の注文の一定割合がPTSに流れ、売買代金が急増しました。

(※)SOR(スマート・オーダー・ルーティン)
ある銘柄の売買注文を入れたとき、自動で最も有利な気配価格を提示している取引所やPTSへ注文を出す発注方法をいう。


(要因2)PTSでの信用取引の解禁


個人投資家で信用取引を行っている人はごくわずかだと思います。しかし、取引の頻度が半端なく多いため、売買代金に占める割合は7割にも及びます。

そして、2019年8月にPTSでの信用取引が解禁されました。

その後、着実に信用取引の利用は拡大し、2020年4月には約2割に達しました。当然、PTSに流れる注文も多くなり、PTSの存在感は増しています。

まとめ


対面型とネット証券との戦いのみならず、証券取引所も厳しい競争にさらされてきました。

投資家にとっては、流動性と価格の妥当性が確保されれば、どこの取引所で買っても別に気にすることはありません。

日用品をなるべく安いスーパーで買うのとなんら変わりません。

既存の証券取引所にとっては黒船来襲という厳しい環境が始まっていますが、共存共栄で公正な証券市場を維持してもらいたいものです。

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