自民党の憲法改正草案はデフレ政策を正当化する

自民党の党是は憲法改正です。自民党は憲法を改正するために結党されたといっても過言ではありません。しかし、情けないことに戦後70年以上経ってもそれは実現されておらず、今後実現できるかも全く怪しげといわざるを得ません。
なにしろ憲法改正にあれほど熱心であった安倍首相でさえ、憲法改正の発議にさえこぎつけられないという厚い壁が立ちはだかっているのです。
安倍首相の任期はあと1年と少し。とても憲法改正まで行きつくことはできないでしょう。コロナ対応でそれどころではなくなってしまいました。
憲法改正阻止のために、コロナウイルスを某国がまき散らかしたのではないかと変な憶測をしてしまいそうです。もちろん何の根拠も証拠もないのですが・・・。
自民党の憲法改正草案
自民党のホームページには、自民党が作った憲法改正案が掲載されています。改正箇所は懸案となっている憲法9条だけではなく、各所に散りばめられております。
詳細については自民党のホームページをご覧ください。
そして、その中には目だたぬ形でデフレで苦しむ日本を再起不能にしかねない改正案がひっそりと潜んでいるのです。
いったい誰が何の目的で入れたのかまではわかりません。
財政健全化を謳う憲法草案第83条
現行憲法の第7章 財政の第83条に以下の記述があります。
第83条
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。
そして自民党改正草案には上記に加え、第2項が加えられています。新設です。
2.財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない 。
なんでこんな条文が加えられたのでしょうか。自民党が作ったQ&Aにはさらりと以下のように説明されています。
「83条に新しく2項を加えて、「財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない」とし、財政の健全性を初めて憲法上の価値として規定しました。具体的な健全性の基準は、わが党がかつて提出した「財政健全化責任法案」のような法律で規定することになります。」
となると財政健全化責任法案なるものがどのようなものであったのかに興味が移ります。
財政健全化責任法案の内容
衆議院のホームぺージにその概要が掲載されていました。
財政運営の基本原則
① 基礎的財政収支額の黒字化
② 資産を適正に管理・有効活用するとともに、債務残高を低減
③ 将来世代に配慮し、一定水準の純資産を維持
④ 経済事情の著しい変動等による歳入減少/歳出増加が財政に与える影響を軽減
⑤ 税負担水準をできる限り安定的に維持し、水準の変更における国民の予見可能性を確保
① 基礎的財政収支額の黒字化
② 資産を適正に管理・有効活用するとともに、債務残高を低減
③ 将来世代に配慮し、一定水準の純資産を維持
④ 経済事情の著しい変動等による歳入減少/歳出増加が財政に与える影響を軽減
⑤ 税負担水準をできる限り安定的に維持し、水準の変更における国民の予見可能性を確保
財務省が泣いて喜びそうな内容です。増税の錦の御旗となるのですから。特に⑤などは消費増税の口実にぴったりです。
そして庶民から税金をむしり取った挙句、デフレ脱却はひたすら遠のき、日本人は今よりもますます貧困化していくのは火を見るよりも明らかなのです。
このデフレ期にこの内容は最悪なのです。そして時代遅れの考え方です。現に今の経済運営の最大の目標はインフレターゲット2%の実現です。
財政健全化など二の次なのです。なにしろ日本には財政破綻の可能性はないのですから。アルゼンチンやレバノンと一緒にされてはたまりません。
また最悪なのは①と②。プライマリーバランスの黒字化と国債発行の低減化です。
なぜなら、プライマリーバランスを黒字化させれば、国民はますます貧しくなるからです。既に日本人の実質賃金はここ10数年で大きく下がりました。

(出所:三橋貴明氏ブログ「新世紀のビッグブラザーへ」)
アベノマスクじゃなくて、アベノミクスなどという言葉に騙されてはいけません。
安倍政権後も着実に国民は貧困化しています。国民が等しく貧乏になっているので、気が付いていない人が多いのです。
中国人の爆買いを考えればわかるでしょう。相対的に日本人がいかに貧乏化したか。ゆでガエルのように貧しくなっているので気が付いていないだけなのです。
国民経済の主体とそのバランス
国民経済は主に以下の4つで成り立っており、すべての総和がゼロになります。
政府の収支 + 家計の収支 + 企業の収支(決算の黒字・赤字ではなく負債を増やし設備投資したかどうか)+ 海外の収支(貿易黒字を出せば海外の収支は赤字となる)
さて、プライマリーバランスの黒字化は政府の収支を黒字化するということです。
となると残り3つで赤字とならないとバランスが取れません。まず企業の収支ですが、このデフレ時にあえて銀行から借金して設備投資する企業はごくまれでしょう。
企業は内部留保を厚くすることに熱心です。よって引き続き企業の収支は黒字を続ける可能性が高い。
続いて、海外の収支ですが、原子力発電がほぼ止まり、エネルギーはほとんと石油依存です。(今は石油が安いので救われていますが・・・)
海外の国々も不況で輸出も伸びないので、貿易黒字は伸びにくく海外の収支で大きな利益を得ることは難しくなってきました。ほとんどトントンといったところです。
政府(黒字)+ 企業(黒字)+ 海外(トントン)となれば、その黒字を賄うのは家計の赤字しかなくなります。
財務省は家計から税金をむしり取ることだけを考えている
要するに税金で家計からお金をむしり取らなければプラスマイナスゼロにはなりません。それはプライマリーバランスが黒字化しないことを意味します。
だからこそ、財務省は消費税を上げたがっているのです。
プライマリーバランスを黒字化するにはそれしかないからです。なぜそんな国賊的な行為をするのかは理解不能です。たぶん彼らにとっては国民など二の次。庶民が苦しもうがそれはあくまで他人事だからなのでしょう。
あるいは日本を弱体化させたい外国勢力のハニートラップやマネートラップにかかったスパイが多いのかもしれません。あくまで可能性の話ですが・・・。
まとめ
とにかく自民党の憲法改正草案の中には目立たぬように、そしてもっともらしく罠が仕掛けられています。
憲法9条の改正は大賛成ですが、そこだけに目を配っていると思わぬところに落とし穴が掘られているというのが実態なのです。
この世には策略がうごめいているのです。
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