SBIがライブスター証券を買収。ネット証券苦境の時代へ

株価ボード



それにしても驚いたのは2020年4~6月期のauカブコム証券の決算です。なんと3億円弱の赤字に転落しました。

同時期はコロナ騒動の中で、ネット証券口座数が相当な伸びを見せ、追い風が吹いていたにもかかわらずです。



auカブコム赤字転落の要因


auカブコム証券が赤字に転落した要因は信用取引での株式売買委託手数料の無料化です。

せっかく売買が増えたのに手数料は入ってこない。書き入れ時だったのにその機を逃してしまうことになりました。

当初の計画では現物株の手数料も今年春を目途として無料化する計画も打ち出されていましたが、これでその実現は大きく遠のいたと見ます。

信用取引手数料を無料化しなかった他のネット証券大手は同時期に大幅な増益となっており、auカブコムが一人負けの様相を呈しています。

ところが無謀にもauカブコム証券に追随した中堅ネット証券があります。ライブスター証券(※)です。

2019年12月にauカブコム証券の後を追いライブスター証券も信用取引の手数料を無料にしました。その結果、売買は増えたものの収益は減少し、2020年3月期は赤字に転落してしまいました。

(※)ライブスター証券
長らくセンチュリー証券として活動した証券会社が母体。その後、会社再編が続き、2011年よりライブスター証券として営業している。


SBIがライブスター証券を買収へ


ところで、SBIホールディングスの金融ビジネス展開のスピードそして規模は他社を凌駕しています。こと金融に関しては楽天ブランドをもしのぐ存在感を示しています。

そのSBIHDがまた巨大化することになりそうです。SBIHDがライブスター証券を買収することになったのです。買収金額は数十億円程度になる見込みです。

ライブスター証券は約20万の顧客を抱えています。SBIグループ入りすることで、システムの共通化など合理化を図っていく方針です。

手数料自由化とインターネットの普及


1999年の株式売買委託手数料の自由化とインターネットの普及の相乗効果で手数料の下げは一挙に進むとともに、寡占化が進みました。

手数料率は概ね100分の1程度に下がっています。経営体力のない会社がついていけるはずがありません。

今や個人投資家の株式取引のほとんどが以下の5社を経由しています。

SBI証券(543万口座)
楽天証券(410万口座)
マネックス証券(186万口座)
松井証券(124万口座)
auカブコム証券(115万口座)

5強とはいえ、SBI証券と楽天証券の強さが際立っております。

SBIもauカブコムと同じ道を歩むのか


しかし、安穏と見ていられないのはSBI証券もまた、株式手数料の無料化を視野に入れていることです。

決算発表で、SBIHDの北尾社長はできるだけ早く手数料を無料化したい意向を示しています。

SBI証券もまたauカブコム証券と同じく売買活況でも利益が上がらないという同じ轍を踏む可能性があるわけです。

まとめ


auカブコムの決算は今後のネット証券の戦略に大きな影響を与えるに違いありません。投資家としては手数料が安いのはうれしいことですが、それはあくまでも会社が存続していくという大前提があるからです。

事業の継続が危ぶまれるような証券会社に資金を預けたいとは誰も思わないでしょう。だからこそ証券会社は黒字を維持していく必要があります。

今後数年後、再びネット証券の大再編が起こりえます。また、昨今新興のスマホ証券の参入が相次いでいますが、こちらも再編されていくでしょう。

また今後、対面証券の再編も一挙に進んでいくものと推測します。

対面証券の顧客は高齢化し、新規の顧客ではとても賄いきれません。若い顧客はネットあるいはスマホで注文するのが当たり前です。

高齢者を食い物にして生き延びるしかありませんが、昨今の顧客本位の業務運営からはかけ離れた営業になります。かといって、真面目に顧客本位などといっていたら赤字垂れ流しは必至です。

対面型の証券営業はもはや前世紀の遺物となりつつあります。

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